カラーグラフ 診療に役立つ肉眼像と組織像の理解―マクロからミクロ像を読む・16
乳腺疾患
大野 真司
1
,
内田 陽子
1
,
平橋 美奈子
2
,
西山 憲一
2
,
角南 俊也
3
Shinji OHNO
1
1国立病院機構九州がんセンター乳腺科
2国立病院機構九州がんセンター臨床検査科病理
3国立病院機構九州がんセンター放射線科
pp.445-454
発行日 2007年4月20日
Published Date 2007/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101197
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はじめに
乳腺は乳管と乳腺小葉などの上皮組織と間質,脂肪組織などの間葉系組織から構成される臓器であり,乳腺に発生する腫瘍は,その起源から上皮性と非上皮性,性質からは良性と悪性に分類される.乳腺組織は女性ホルモンの影響を受けることから,その組織像も多岐にわたっている.
乳腺は体表組織であることから視触診の所見が診断過程に重要であるが,最近は非触知乳癌も増加してきた.わが国でも乳癌検診にマンモグラフィの導入されるようになり,さらに乳房超音波検査の検診における有用性についての検討も行われようとしている.診断ガイドラインも整備され,共通の所見用語の普及が期待されている1,2).マンモグラフィや超音波検査の普及は,より早期の乳癌の発見率を向上させるものであるが,一方で鑑別困難な症例に遭遇する機会が増えてきた.また,質的診断や存在診断だけでなく切除範囲の決定のための広がり診断など,MRIやCTの所見も有用となる.すなわち,正しい診断と適切な治療方針構築には,解剖学と病理学の知識に基づいた「画像と病理組織像の対比」がきわめて重要である.また,質の高い画像や検体の供給は必須であり,乳腺外科医,放射線診断医,病理医,放射線技師,超音波検査技師,細胞診検査技師などの緊密な協力と連携が不可欠である.
本稿では代表的な乳腺疾患について解説し,触診所見も含めてその画像(マクロ所見)と病理組織像(ミクロ所見)とを対比して示す.なお,筆者らは医用画像データベース構築しているので参考にしていただければ幸いである(http://www.ia-nkcc.jp/,http://breast-tumor.midb.jp/).
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