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明治7年の秋から翌明治8年の夏までウィーンにおいてBillrothに師事した佐藤進(図1)は帰朝後,Billrothの「Die allgemeine chirurgische Pathologie und Therapie in 50 Vorlesungen」(図2)を底本として順天堂において臨床講義を行い,これを講義録としてまとめて明治9年に「外科通論」(図3)を出版した.そして,この外科通論をBillrothに謹呈したところ,以下に示す丁重な礼状が送られてきたのである(図4).すなわち,「貴君からの懇ろな書簡確かに拝読しました.また,貴君の行った講義記録や貴君が施行した手術記録をお送りいただき,深く感謝しています.ちょうど当クリニックにおいて勉学中の橋本綱常君に翻訳してもらった次第です.小生の研究結果が広く世界中に拡まり,さらに小生の研究が役立って日本の患者に多くの恩恵をもたらしているようで,非常に喜ばしく思います.今後とも貴君の手術がより多くの患者に恩恵をもたらすように祈っています.当クリニックでもリスター氏創傷療法を導入しましたが,非常に満足のいく結果を得ています.つきましては,貴君も使ってみてはいかがでしょう.スプレー用には1%濃度のものを,海綿や器械の消毒には3%を使っています.5%液や2%液では創周囲の皮膚を痛めてしまうようですので,注意すべきです.遠く離れていますが,今後も貴君の近況や手術経験について色々と知らせて下さい.最後になりましたが,小生の最新刊(第八版)の『allgemeine chirurgische Pathlogie und Therapie』を送ります.今後とも末永い御交誼をよろしくお願いします.
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