近代腹部外科の開祖:Billroth
ビルロート余滴・4
佐藤 裕
1,2
Satou Hiroshi
1,2
1北九州市立若松病院外科
2日本医史学会
pp.528-529
発行日 2003年4月20日
Published Date 2003/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101364
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Mikuliczらが追跡調査した4月10日の時点では順調に回復していたかにみえたが,4月下旬頃から容態が悪くなり,次第に再発の徴候が明らかとなった.そして,再び病床に伏すようになり,5月24日に死亡するに至った.その際,Billrothは患家においていわゆる「necropsy」を行い,世界初の胃癌切除手術(幽門切除:pylorectomy)の成否(吻合部の状況,感染の有無など)を検証した(ただし,ウィーン大学にはこの症例の正式な剖検記録は残っていないという).
そして,この際に摘出された残胃標本が1月に摘出された「幽門癌」とともに,Billrothの偉業をたたえて医学博物館(図1)に展示され,衆目を集めている.この際,剖検で得られた残胃標本(図2)については,これまでにいろいろと成書に紹介されてきているが,“非の打ち所のない完璧な吻合”がなされているのはよく知られている.手術時にはすでにかなりの進行癌であったため,術後4か月ほどで再発死したのであるが,胃癌に対する胃切除手術としては成功であったと評価されている.
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