外科の常識・非常識 人に聞けない素朴な疑問 2
急性腹症の鎮痛剤は避けるべきか
安達 洋祐
1
Adachi Yosuke
1
1岐阜大学医学部第2外科
pp.620-621
発行日 2004年5月20日
Published Date 2004/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407100627
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急性腹症の患者は,診断と方針が決まるまで鎮痛剤を投与してはいけないと言われている.その理由は,鎮痛剤を投与すると,①腹部所見が変化して正しい診断ができず,②手術が必要か否かの判断を誤るからという.確かに,急性虫垂炎の患者でも鎮痛剤が投与されるのは手術場に搬入される直前である.
「腹痛の患者に鎮痛剤を使うな」という考えは,1921年のアメリカの教科書までさかのぼるらしい.鎮痛剤投与の是非については,1979年になってBMJ(British Medical Journal)の誌上で議論されたが,臨床試験が行われたのは最近10年間であり,世界的な外科の雑誌に臨床研究やレビューが掲載されたのは2003年である.
そこで,「急性腹症の鎮痛剤は避けるべきか」というテーマに対して,まず,これまでに行われた臨床試験の概要を示し,つぎに2003年に発表された3つの論文を紹介し,最後に,臨床医の立場から個人的な意見を述べる.
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