外科学温故知新・6
外科侵襲
井上 雅智
1
Masatoshi INOUE
1
1近畿大学医学部奈良病院消化器外科
pp.211-216
発行日 2006年2月20日
Published Date 2006/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407100362
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1 はじめに
侵襲とは外部からの生体に対する攻撃のことであり,この攻撃に対し生体は防御機構を作動し,生体反応が惹起されるのである.侵襲が大きくなればなるほど生体反応は強くなるであろうから,われわれ外科医が最も精力を注がなくてはならないことは,侵襲を軽減することである.この認識から臨床面で様々な工夫がなされているが,近年開発され広く普及してきた内視鏡下手術は,生体に対する機械的侵襲を軽減することに多大な役割を果たしている.また,SSI(surgical site infection)のサーベイランスは感染予防に貢献しているのである.一方,侵襲に対する生体反応システムの解析はサイトカインの発見を契機に飛躍的に発展させており,病態の原因が詳細に究明されてきている.また,臨床的にもSIRS(systemic inflammatory response syndrome)の概念が導入され,今まで曖昧であった敗血症(sepsis)の定義がこれによって明確になった.
本稿では,「外科学温故知新」ということで,侵襲に対する生体反応に限定して過去,現在,未来を筆者なりにまとめてみた.
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