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特集 脳梗塞に対する血栓溶解療法の進歩
1.血栓溶解薬の進歩
Progress in Thrombolytic Agents
内山 真一郎
1
Shinichiro Uchiyama
1
1東京女子医科大学附属脳神経センター神経内科
1Department of Neurology, Neurological Institute, Tokyo Women's Medical University
キーワード:
plasminogen activators
,
plasmin
,
fibrinogen
,
fibrin
,
fibrin degradation products
Keyword:
plasminogen activators
,
plasmin
,
fibrinogen
,
fibrin
,
fibrin degradation products
pp.851-856
発行日 2000年10月1日
Published Date 2000/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901660
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はじめに
脳梗塞の大多数は血栓による脳動脈の閉塞により生じるので,抗血栓療法は脳梗塞のもっとも本質的な治療法であるといえる。抗血栓療法には抗血小板療法,抗凝固療法,血栓溶解療法があるが,血栓溶解療法は脳動脈を閉塞させたフィブリン血栓自体を溶解し,脳組織への血流再開を目的とした治療法なので,続発性血栓の伸展や血栓の再発による再閉塞を抑制するだけの抗凝固療法や抗血小板療法よりも理論的には急性期脳梗塞の理想的な治療法であるといえる1,2)。これまで,大規模な無作為化比較試験(RCT)により脳梗塞そのものに有効であると証明され,国際的にコンセンサスの得られた治療法が存在しなかったため,脳梗塞の治療は長い"ペシミズム"の時代が続いたが,最近,超急性期の脳梗塞に血栓溶解薬である組織プラスミノゲンアクチベータ(t-PA)の有効性が報告され,脳梗塞の急性期治療は"ブレイン・アタック"のキャンペーンとともに新時代に突入した感がある。しかし,このt-PA療法も発症後3時間以内の患者にしか有効性が期待できないという治療可能時間(therapeutic time win-dow)の狭さの他にも,長期予後改善効果に対する出血合併症の危険性という効果対危険比(risk to bene-fit)や,半減期が短いことから大量の持続投与を必要とするため,医療費が高額になるという効果対医療費(cost to benefit)など多くの問題を抱えている。
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