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はじめに
慢性炎症性脱髄性多発神経炎(chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy:CIDP)は2カ月以上にわたる進行性,または再発性の経過で運動感覚性の末梢神経障害(ニューロパチー)を来す免疫介在性の疾患である1,2).電気生理学的に脱髄を示唆する所見がみられることが診断上重要であるが,臨床像は多様であり,複数の病態が混在した疾患と考えられている.自己抗体などの疾患特異的なバイオマーカーが明らかになっておらず,これまでに多くの診断基準が提唱されてきた.なかでも有名なものとして,American Academy of Neurology(AAN)が提唱した診断基準と,European Federation of Neurological Societies/Peripheral Nerve Society(EFNS/PNS)ガイドラインの診断基準の2つがあり3,4),特に後者(EFNS/PNS診断基準)が頻用されてきた.EFNS/PNSのガイドラインは2021年にEuropean Academy of Neurology(EAN)/PNSガイドラインとして改訂版が発表され,病型の呼称や診断基準に若干の変更がみられた5).
わが国におけるCIDPの有病率と発症率は,AANの診断基準を用いて2004〜2005年にかけて行われた全国疫学調査によると,それぞれ10万人あたり1.61人と0.48人であった6).AANの診断基準は1991年に典型的CIDPを想定して作成されたものであり,現在頻用されているEAN/PNS診断基準を採用した場合,後述するような亜型も加わることから,有病率と発症率はより高くなると考えられている.
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