「脳と神経」への手紙
我が師フランク・モレル(Prof.Frank Morrell)
長谷川 寿紀
1
1Montana Epilepsy Program
pp.489
発行日 1997年5月1日
Published Date 1997/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901115
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私が初めてシカゴのラッシュてんかんセンターにフェローシップの面接に行ったのは1991年のことだった。建物の礎石銘の落成の日付がシカゴが町から市に昇格した翌日というような古色蒼然とした建物の中に最新鋭の脳波監視機器を持ち込んだてんかん病棟とモレル教授のリサーチオフィスがあった。彼のオフィスの西の窓からアイゼンハワーフリーウェイの車の途切れざる流れと,かつて映画「逃亡者」の舞台となった,クックカウンティ病院が見えた。大きなオフィスにはゆったりとしたソファがあり,その周りには過去の文献や資料がうず高く並べられていた。モレル教授のデスクはその真っ只中にあった。
面接のときモレル教授は,その所狭しと並べられた資料の山を指差して,「われわれには十分な情報があるが,しかし私にはそれをまとめる脳味噌がない(Ihave a lot of information but no brain to dealwith.)」とあっけらかんとして言ったので,うっかり笑ってしまったことを昨日の事のように思い出す。彼がそう言ったのは勿論謙遜の故だが同じことを私が言えば人はそのまま信じてしまうに違いない。
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