Japanese
English
特集 脳腫瘍のgene therapy
脳腫瘍におけるp53癌抑制遺伝子の変異
p53 Gene Mutations in Brain Tumors
古閑 比佐志
1
,
熊西 敏郎
2
Hisashi Koga
1
,
Toshiro Kumanishi
2
1琉球大学医学部脳神経外科
2新潟大学脳研究所分子神経病理学部門
1Department of Neurosurgery, University of the Ryukyus School of Medicine
2Department of Neuropathology, Brain Research Institute, Niigata University
キーワード:
p53 gene mutations
,
brain tumors
,
PCR-SSCP
Keyword:
p53 gene mutations
,
brain tumors
,
PCR-SSCP
pp.845-855
発行日 1995年9月1日
Published Date 1995/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406900837
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I.はじめに
悪性腫瘍の遺伝子治療を考える際,何をそのターゲットとするかは治療効率に最も影響を及ぼす重要な問題であることは言うまでもない。したがって脳腫瘍における遺伝子異常の実体を明らかにすることは,脳腫瘍の遺伝子治療を開始する前段階として避けて通れない重要な研究分野であろう。現在までに脳腫瘍の遺伝子異常はmyc1),gli2),erbB−1(EGFR)3,4),erbB—2(neu)5),sis6),PDGFR7,8),p537〜22)など様々な癌関連遺伝子で報告されている。とりわけp53癌抑制遺伝子は,脳腫瘍特にgliomaにおいて精力的に解析されその異常が高率に認められている。
ごく最近,米国において肺癌に対するretrovirus vectorを用いた野生型p53遺伝子導入の臨床認可が下りた。しかし,現時点においてp53に関連した遺伝子治療は,遺伝子導入効率など改善せねばならない問題点を多く残している。他方,変異型p53遺伝子産物は過剰に発現して細胞内に蓄積し,宿主側に抗原として認識され抗体が産生されることがヒトにおいても確認されている23)。変異型p53蛋白質はkiller T—cellの標的分子にもなり得ることからp53は免疫療法のターゲットとなる可能性も秘めている24)。
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