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I.はじめに
血漿交換(Plasma exchange,以下PEと略す)は患者血漿中より大分子量の病因物質(自己抗体,代謝性物質,中毒物質など)を除去して健常な血漿と置き換えることで病態の改善を図る血漿浄化法の1つである。PEの代わりにplasmapheresisまたはapheresisも同意語として用いられているが,plasmapheresisは,もともとplasma(血漿)とapheresis(分離)から成るギリシャ語の合成語で血漿分離を意味し,それだけでは治療とは成り得ない。plasmapheresisは,健康なdonorからplasmaのみを採取する目的で行うdonor(またはdonation plasmapheresisと臨床的に治療を目的としたtherapeutic plasmapheresisを明確に区別すべきであるが,近来の血漿分離技術の進歩は選択的に目的とする分子量分画のみ,または病因物質のみの特異的除去を可能としており,今日ではPEまたはplasmapheresisやapheresisといえばthera—peutic PEのことを指すようになった。
Therapeutic PEは1970年代半ばより比重の差を利用して血漿と血球を分離し,分離した血漿を健常人血漿と置換する遠心分離法が主流であった。しかし,遠心分離法は血小板も数多く除去されること,置換液として大量の血漿製剤の補給が必要なこと,および置換液によるアナフィラキシー,ウィルス感染(肝炎,AIDSなど)やクエン酸中毒などの副作用1〜3)および装置が高価などの問題があり,限られた施設のみで行われていた。1980年代になると医用高分子化学技術の進展に伴い孔径の異なる2種類の多孔質の高分子の中空子膜を用いて血液よりの血球と血漿を分離し,また,分離した血漿から特定の分子量分画を,より選択的に除く二重膜濾過法が開発されてからPEは急速に普及した。膜分離法の進展と共に免疫性疾患に対しては免疫系の分子間相互作用(親和力)を利用して,免疫応答異常に関与する免疫関連物質(自己抗体,補体,免疫複合体など)を特異的に吸着除去する免疫吸着材が開発された4)。本法は臓器特異性の自己抗体(表1)が出現する免疫1生神経疾患の治療としてアルブミンなどの有用な血漿成分の損失なしに病因物質の選択的除去が可能であるので理論的に優れた方法である。
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