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特集 くも膜下出血による脳血管攣縮の治療
Tissue plasminogen activatorによる脳血管攣縮の予防—投与法と投与量についての検討
Prevention of Cerebral Vasospasm with Tissue Plasminogen Activator
山田 恭造
1
,
太田 富雄
1
Kyozo Yamada
1
,
Tomio Ohta
1
1大阪医科大学脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Osaka Medical College
キーワード:
cerebral vasospasm subarachnoid hemorrhage
,
tissue plasminogen activator
Keyword:
cerebral vasospasm subarachnoid hemorrhage
,
tissue plasminogen activator
pp.809-817
発行日 1993年9月1日
Published Date 1993/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406900529
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I.はじめに
破裂脳動脈瘤に対するクリッピング術は手術用顕微鏡の導入とともに安全に行われるようになった。しかし,その後に出現するdelayed ischemic neurologi—cal deficits(以下,DIND)は誘引物質の同定がなされておらず,確実な治療法はいまだに存在しない。本章では心筋梗塞などの治療に臨床的に用いられるようになった新しい血栓溶解剤であるtissue plasminogenactivator(以下,t-PA)を用いたDINDの予防について報告する。
脳主幹動脈の攣縮が過度に進行すると脳灌流血液量が減少しDINDが出現するが,この攣縮を引き起こす原因物質が動脈瘤破裂によって出現するクモ膜下血腫内に存在することはまちがいない。しかし,その病態は依然として不明であり,特定の原因物質の同定はなされていない。クリッピング術が行われ,患者の状態が安定してくる時期とDINDの出現する時期が一致するために,良好な術後経過をとり,患者のみならず主治医も,家族も一息ついたときに出現するDINDは,脳外科医にとっては悪夢以外の何物でもない。発症48時間以内の早期手術と各種の薬物治療,さらには脳灌流血液量を確保する輸液管理などによって,破裂脳動脈瘤の予後は確実に改善されてきた。しかし,これらの治療に抵抗し,重篤なDINDによって不幸な転帰をとる症例もやはり存在する。
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