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はじめに
血栓溶解薬は,plasminogenを活性化してplasminにするplasmin activator(PA)である。したがってここで生じたplasminのfibrin溶解作用を利用して,血管内血栓を融解し,やがて血流の再開をはかるのが線溶療法の目的である。しかし,この過程においては,まずPAの活性化を阻止するplasminogen activator inhibitor(PAI)があり,ついでplasmin活性を阻害するα2—plasmin inhibitor(α2—PI)があることを考慮に入れなければならない(図1)1)。線溶療法では,PAの生理的な濃度を上回る大量のPAが投与されるので,PAIの影響はないといって,まず差支えない(ただし血栓症の発生にはPAIが関与することは明らかにされている)。一方α2—PIは,新しく生じたplasminを失活化することも周知の通りである。血栓を溶解する過程において,ウロキナーゼ(UK)を使用した場合と,組織プラスミノゲン活性化因子tis—sue plasminogen activator(t-PA)を使用した場合とは,その作用機序も結果も異なってくる。すなわちUKはfibrinとの親和性に乏しく,主として流血(液相)中のplasminogenを活性化し,遊離したplasminは血中のα2—PIと競合しつつ,血中のfibrinogenを溶解する。しかし血栓(固相)中のfibrinを溶解する作用は少ない。このようなUKに比べて,t-PAはfibrinとの親和性が強く,血栓中のfibrinを溶解するが,UKのように血中のfibrinを溶解することがないので,出血傾向を呈することはほとんどないとされている。両者の作用部位の相異点を図22)に示す。なおt-PAと同様の作用を有する血栓溶解薬には,pro—urokinase(Pro-UK)やanisoylated plasminogen streptokinase activator complex(APSAC)がある。
本稿ではまずUK療法からt-PA療法に至るまでの線溶療法の用量や効果などの変遷について述べ,最近実施されている動注あるいはカテーテル法について,その有用性を検討するとともに,t-PA療法の将来性について,その有効性,適応の面から卑見を述べることとしたい。
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