Japanese
English
総説
神経発生における多様性の問題—単クローン抗体技術の応用を中心として
Problem of Diversity in Neural Development
岡本 治正
1
,
三谷 昌平
1
Harumasa Okamoto
1
,
Shohei Mitani
1
1東京大学医学部脳研究施設神経生物学部門
1Department of Neurobiology, Institute of Brain Research, Faculty of Medicine, Unversity of Tokyo
キーワード:
neural development
,
monoclonal antibody
,
neural induction
,
homoeotic gene
Keyword:
neural development
,
monoclonal antibody
,
neural induction
,
homoeotic gene
pp.799-812
発行日 1990年9月1日
Published Date 1990/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406900091
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I.はじめに
神経系の働きには,特に人間のそれに代表されるように目覚ましいものがあり,個体発生の中で神経組織がどのように分化構築されてくるのか昔から多くの人々の興味を惹きつけてきた。
成人脳には1010ないし1012の神経細胞が存在すると言われ,そこに含まれる神経細胞の種類も多岐にわたる事がCajalによる先駆的業績以来,主として形態学的検索により明らかにされている1)。ちなみに神経解剖学的に神経核(Nucleus)として区別される脳部域は150以上にのぼり,これに大脳皮質の約50の領野を加え,各部域ごとに平均5種類の異なった神経細胞が存在するとしてみると,これだけで神経細胞の種類は約103にのぼると概算される。神経核,領野の区分は主として神経細胞の密度およびサイズに基づいて定められているので2),神経細胞種を区別するより細かな基準——例えば以下に触れる線維結合の特異性等——を設ければこの数はゆうに一桁以上増加する事が予想される。
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