連載 症候学メモ・57
進行性核上性麻痺のつまずき
平山 惠造
1
1千葉大学神経内科
pp.1190
発行日 1989年12月1日
Published Date 1989/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406206438
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◆進行性核上性麻痺はprogres-sive supranuclear palsy (PSP)の日本語直訳であるが,どちらもあまり良い術語とは思われない。本症の主要症候には頸の後屈,筋固縮,構音障害,嚥下障害などが上げられるが,核上性垂直注視麻痺は最も特徴的な,重要な症候である。これ故にsupranuclear palsyの名が冠されたわけであるが,その点からすればprogressive supranuclear ophthal-moplegia (進行性核上性眼筋麻痺〉と称した方が明確である。また実際にこの言葉を用いている論文もある。他の構音障害や嚥下障害にも引っかけた核上性麻痺ということになると話はややこしくなる。前置きはこの辺にとどめよう。
◆さて,本症患者では,足元がおぼつかなくて,よく顛倒することがある。それは何故であろうか。本症は大きくはParkinsonismの範疇に入れられるので,Parkinson病患者にみられる立直り反射の障害のためであろうか。これも確かに,ころんで倒れる理由の一つには数えられる。とくに病期が進んだ場合には立位平衡の不安定さがみられる。
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