書評
—小川 紀雄(岡山大学助教授・脳代謝研究施設)—内科医のための臨床痴呆学
植村 研一
1
1浜松医科大学脳神経外科
pp.501
発行日 1989年5月1日
Published Date 1989/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406206318
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高齢化社会を迎え痴呆老人に対する関心が医学的にも社会的にも昂まっている。精神病院に入院している痴呆老人は10%にしか過ぎず,90%が自宅あるいは一般病院で治療や介護を受けているにもかかわらず,痴呆老人の診療に関する書物や論文の大半は精神科医によって書かれ,その内容も精神科医が診る重症痴呆患者を対象とした,「いかなる治療をしても軽快することはない」という想定のもとに,精神科医にしか興味のない難しい「臨床心理検査」を中心に解説されており,痴呆患者を診る機会の最も多い一般実地臨床医の役には立っていない。
軽症痴呆患者が最初から精神科医を受診するはずはなく,「まさか痴呆とは」と思われる症状で一般実地臨床医を受診しているのが現状である。しかも精神科医の経験とは相反して,多くの軽症痴呆患者は適切な治療と介護によって,一時的にしろ,かなりの回復が期待されるのも事実である。ここに一般実地臨床医に「分かり易く,日常臨床に役立つ」痴呆患者の解説書が強く望まれている所以がある。
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