書評
—小川紀雄(岡山大学助教授・脳代謝研究施設)—内科医のための臨床痴呆学
水野 美邦
1
1自治医科大学神経内科
pp.360
発行日 1989年4月1日
Published Date 1989/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406206292
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- 文献概要
この度岡山大学脳代謝研の小川紀雄先生による『内科医のための臨床痴呆学』が医学書院から出版されたが,痴呆老人の多くが内科医によって治療されているにも拘わらず,痴呆に関する書物は多くは,精神科医によって書かれたもので,内科医或は神経内科医によって書かれた物は少ない。この書物はその序に言っておられるごとく『内科医による』『内科医のための臨床痴呆学』の入門書として,極めて時期を得た書物である。また内容も素晴らしい。
本書はA5版190頁よりなり,著者オリジナルの図が豊富に取り入れられていて,大変読み易く出来ている。全体は9章よりなり,痴呆を理解するための脳の形態,生理,生化学,老化,記憶,学習など基礎的知識の解説に始まり,痴呆を起こす二大疾患,即ちアルツハイマー病と血管障害性痴呆の特徴の説明,これらと鑑別すべきその他の主な疾患,痴呆患者の治療と続き,痴呆や神経内科を専門としない人でも,自然に痴呆の病態と,治療の仕方が理解出来るよう配慮されている。小川氏の著書やお話しは専門的な内容を極めて解り易く説明されるのが特徴であるが,本書も文章は簡潔,平易でかつ最近の知識まで網羅されている。おそらく医師以外の人が読んでもついて行かれるのではないかと思われるほどである。
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