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はじめに
Collision法を用いた末梢神経伝導速度測定法について述べる前に,臨床検査として日常的に行われている検査法の概略とその問題点について簡単に記し,collision法が用いられるようになった経過についてもふれる。
現在末梢神経伝導速度の測定法は,末梢神経障害の程度を客観的に評価する機能検査法として用いられている。運動神経の場合は,異なる二点でその支配筋に最大の筋電図現象を起こす強度(supramaximal)で電気刺激して誘発される筋電図の潜時の差で刺激をした二点間の距離を割り,算出する。感覚神経の場合には,最大の活動電位が誘発できる強度(supramaximal)で順行性又は逆行性に神経を電気刺激して刺激部位と記録部位との距離を活動電位の潜時で割って求めるが,双方とも伝導速度のうち最速の成分,即ち,最大の径をもつ線維群の速度しか求めることができない。しかし末梢神経は種々の径をもつ線維で構成されており,Erlanger, Gasser(1924)の実験以来,太い径の線維は伝導速度が大きく,細い径の線維は小さいことが知られており,最大伝導速度のみではその末梢神経の生理学的性質を反映しているとはいえない。また,末梢神経障害の際には,神経線維の障害の分布は様々であり,例えば,ヂフテリアニューロパシー,鉛ニューロパシー,糖尿病ニューロパシーなどの疾患においては大径有髄線維がかなり選択的に侵されるが,一方これらの疾患とは異なった分布をとる神経線維の障害をおこす場合もあるので,最大伝導速度のみではその病態を正確に反映しているとはいえない。したがって,より遅い伝導速度の測定,更に種々の伝導速度成分の分布まで求めることができれば,末梢神経の生理学的特性や,種々の末梢神経障害の病態生理やその経時的変化についても知ることが出来るため,診断にも役立ち,治療効果などもより正確に判定でき,臨床的に極めて有用であると考えられる。
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