Japanese
English
総説
末梢神経の生化学
Biochemical Studies on Peripheral Nervous System
植村 慶一
1
Keiichi Uyemura
1
1埼玉医科大学第一生理
1Department of Physiology, Saitama Medical School
pp.709-718
発行日 1987年8月1日
Published Date 1987/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205946
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
神経系は中枢神経系と末梢神経系に大別される。脳や脊髄からなる末梢神経系に対して,その外にあって体表や体内の諸器官に分布する神経をまとめて,末梢神経系という。末梢神経系は運動や感覚に関与する体性神経系と内臓や血管系に分布する自律神経系に分けられ,さらに体性神経系は,中枢神経系から骨格筋に興奮を伝える遠心性の運動神経系と末梢の感覚受容器から中枢神経系に興奮を伝える求心性の感覚神経系がある。これらの点を考慮にいれた末梢神経系の生化学的研究はまだほとんどなく,今後の課題として残されている。
末梢神経系の構成要素としては,神経細胞の軸索とシュワン細胞由来のミエリンが主なものである。神経細胞の軸索は,ナトリウムチャンネルなどを含む興奮性膜とニューロフィラメントや微小管などの細胞骨格構造に富む細胞質よりなる。興奮性膜については,最近の遺伝子工学的および生化学手法を駆使した研究によって,ナトリウムチャンネルを構成する糖蛋白およびNa\K活性化ATP分解酵素のαサブユニットの全アミノ酸配列が決定され蛋白の構造と機能の関連が明らかとなりつつある。また,軸索とミエリンの結合に接着因子が重要な役割を果たしていると推定されている。ミエリン膜は特異な多重層構造を形成しており,この分子構築の解明は興味深い課題の一つである。本稿では,末梢神経の生化学的研究の最近のトピックスとして,興奮性膜,細胞骨格,細胞接着因子,シュワン細胞,ミエリンの分子構築などについて展望を試みた。
Copyright © 1987, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.