連載 症候学メモ・15
多汗と無汗
平山 惠造
1
1千葉大学神経内科
pp.252
発行日 1986年3月1日
Published Date 1986/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205674
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◆多汗,すなわち発汗過多には気付きやすいので,それを異常と思って来院する人がいる。また,医師の中でもそのように思う人が多い。確かに,ある種の精神緊張状態では手に汗を握るようになるし,額から汗が流れたりするので,多汗を異常とみるのは当然かもしれない。しかし,神経学的にもっと広くみると発汗は,大脳性の精神作用と関連する場合を別とすれば,むしろ減少の方が問題である。
◆発汗は健常人でも全身の皮膚から一様に出るものではなく,部位によって多寡があり,また年齢によってもその推移がみられる。それはともかく,我々の体は,皮膚全体としてある量の汗をかくことによって,体温を一定に保つように調節している。いうまでもなく,汗を多くかくことによって,蒸散作用により皮膚温は低下する。また冬は発汗が少なく,夏に発汗が多いのも,これと関係がある。ところで皮膚のある範囲で発汗が起こらなくなると,他の部の発汗を多くすることによって,全身としての発汗量に恒常性をもたせようという働きがある。つまり局部性に生ずる代償性発汗過多である。
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