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救急疾患のみを対象とした画像診断の教科書としては本邦では本書が最初のものであるといってよいだろう。編者の聖マリアンナ医大放射線科石川徹教授と同科の主要スタッフとが中心になって分担執筆したものであるが,救急医療に取組む人々には参考になるところが大きいと思われる。
救急医療の放射線診断に関するテキストとしては,従来は例えばHarris & Harrisの"The Radio—logy of Emergency Medicine"(Williams & Wilkins Co. Balti—more,1975)があった。ほば10年前に刊行されたその初版本と今回の石川氏らのテキストの内容を比較してみると,後者にはこの10年間に爆発的に起った種々の新しい医用画像診断の進歩が鮮やかに刻みこまれていて,この分野でも大きな変革が生じたことも判然とする。特にCTスキャンの影響は頭部に限らず全身の救急診療において明らかであり,「CT前」と「CT後」では診断のすすめ方に根本的な変化の生じた領域も少なくないことが示されている。非侵襲的で簡便な超音波診断の特性も救急疾患の診断にはよく生かされ,例えば急性腹症,閉塞性黄疸,心タンポナーデなどの迅速な診断に頻用されるばかりでなく,超音波ガイド下に行う穿刺吸引や経皮的ドレナージ等の技術の役割も大きい。血管撮影とこれを利用した救急治療もこの10年間に画期的な進歩をみた。これらの新しい診断法が盛りこまれている点が本書の特色の一つではあるが,単純X線撮影を主とする従来の放射線診断の定石が軽視されている訳では決してなく,むしろ多くの場合に最も重要なのは,単純撮影や簡単な造影検査が適正に行われ正確に読影されることであるという点が繰返し強調されている。単純撮影を一寸工夫するだけで目的を果しうる状況下で,不必要に高価な検査や侵襲度の高い検査を行うようなやり方を本書は「斧でハエを殺すような診断」と称していましめている。
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