Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
消化管の活動を調節する内在性のニューロンは,食道の平滑筋部から肛門の内括約筋部まで連続的に存在して,神経叢を形成しており,腸管神経系(Enteric ner—vous system)と総称される。この腸管神経系に関する研究は,近年,急激な発展を逐げ,構造的にも機能的にも非常な多様性を示すことが知られて来ており(Gabella1976,1979,1981 ab,Furness & Costa 1980,Gershon1981,Llewellyn-Smith et al,1983,Schultzberg et al1983,Wood 1983参照),使用される神経伝達物質,微細構造上の特徴などから,中枢神経系との類似性が指摘されている。
さて,最近の研究者をして"忘れられた神経系"と,言わしめたこの腸管神経系を,交感神経系,副交感神経系に加えて,第三の自律神経系として考えることを最初に示唆したのはLangley (1900,1921)であった。その理由として,腸管神経系の神経節は他の自律神経節と組織学的に異なること,中枢神経系への依存度が比較的少なく,内部に完全な反射回路の存在することが挙げられた。この腸管神経系の独自性は,最近の形態学的考察からも充分うなずけることで,Furness & Costa (1980)によれば,ヒトの腸管に内在するニューロンの数は107〜8個と試算されており,これは脊髄の全細胞数にも匹敵する程で,2×103本ほどの遠心性線維を含むと言われる迷走神経(Hoffman & Schnitzlein 1969)が,上記の数のニューロンを完全に支配することは不可能と考えられるからである(Gershon 1981)。
Copyright © 1984, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.