Japanese
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特集 神経疾患と免疫 Ⅰ
脳腫瘍の免疫—脳の免疫学的特異性を中心に
Immunology of brain tumors:Immunological situation of the brain
田中 隆一
1
,
祖父江 八紀
1
Ryuichi Tanaka
1
,
Hachiki Sobue
1
1新潟大学脳研究所脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Brain Research Institute, Niigata University
pp.451-459
発行日 1983年5月1日
Published Date 1983/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205119
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Ⅰ.はじめに
根治的手術を行うことがきわめて困難である悪性脳腫瘍の治療は,術後の補助療法に期待するところが大きい。放射線と化学療法は,悪性脳腫瘍の補助療法として一定の評価を得ているものの,なおその限界をみとめざるを得ない。他臓器の癌患者と同様に,悪性脳腫瘍患者の免疫機能が低下していることが明らかにされ,最近,悪性脳腫瘍に対しても種々の免疫療法が試みられている。
ところで,免疫療法を実施するにあたって念頭に置かなければならないのは,免疫学的にみた脳という臓器の特異性である。リンパ系組織を欠き,免疫グロブリンの通過を阻む血液脳関門で守られている脳は,長い間免疫学的に疎外された臓器であると考えられてきた。その後,この考え方に修正が加えられつつあるが,腫瘍免疫の立場からみて,この問題ははたしてどうなのであろうか。また,最近われわれは,脳に生体の細胞性免疫を調節していると思われる場所が存在することを確認したが,この事実は脳腫瘍患者の免疫能を分析する上でも,免疫療法を検討する上でも考慮に入れておく必要があろう。はたして,脳に免疫中枢なるものは存在するのであろうか。さらに,脳腫瘍の免疫療法を実施するにあたり,またその効果を正しく評価するにあたり,脳腫瘍患者の免疫能を把握しておくことは重要であるが,実際にはどのような免疫学的パラメーターを選択すべきか,また,腫瘍の発育あるいは種々の治療によってこれらの免疫能がどう変化するのか,といった問題に関しては必ずしも十分な検討がなされていないように思われる。
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