検査法の基礎理論 なぜこうなるの?
TPHAの特異性について
富澤 孝之
1
1ウエルマー研究所
pp.545-548
発行日 1981年7月1日
Published Date 1981/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543205337
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TPHAは,梅毒の病原体であるPathogenic-Treponema pallidum(TP)の成分を担体である血球に物理化学的に吸着させ,それを抗原として梅毒患者血清中に存在する抗体を血球凝集の形でみる反応である.ゆえに理屈から言えば梅毒の病原体を抗原としているので,これをもって特異的反応であると言わざるを得ない.しかしこの反応も生物学的反応である以上いろいろなじゃまものが介在している.その原因は,①病原性TPは生体外で純培養が現在までできていないこと,②ウサギの睾丸に継代培養して集めたTPを抗原に使用している,③病原性TPに近縁のnon-pathogenic(非病原性)TPが生体に共存している,などである.これらのことがかぶさって出来上がったTPHAの特異性は,理屈で期待されたものよりも低下していることは考えられることである.
ところがこのような非特異物質の介在があるにしても,TPHAが開発されて10年以上を経た今日いろいろと改良がなされ,現在においてはその非特異性は0.3%以下と想定されている.そこで本題であるTPHAの特異性について三つの見方,すなわち,①梅毒病原体よりみたTPHAの特異性,②ルーチン検査よりみたTPHAの特異性,③感染免疫そして治癒の面よりみたTPHAの特異性,ということに分けて述べてみたいと思う.
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