書評
—著 ジョン・フライ 訳 日野原重明 紀伊國献三—プライマリ・ケアとは何か—医療への新しいアプローチ
田野 吉彦
1
1川崎医科大学総合診療部
pp.1186
発行日 1981年12月1日
Published Date 1981/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204856
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現在,"プライマリ・ケア"なる言葉は流行語となり,多くの人がその重要性を漠然と知りつつも,真の意味するところの理解はなされていないのが現状である。プライマリ・ケアの意味を混沌とさせた原因の一つに,真の意味が理解されぬまま,単に流行語として"プライマリ・ケア"なる言葉を付けた書物が世に多く出され,プライマリ・ケアを実際に体験し,真剣に取り組んで「プライマリ・ケアとは何か」なる問に解答を与えた書物が少ないことにある。著者John Fryは,イギリスの一開業医として25年間プライマリ・ケアを実践してきた。彼は,その豊富な体験を生かし,彼自身の論文を初め,多くの資料を参考に,題名にみられる「プライマリ・ケアとは何か」なる問に対して理解し易く解説している。
本書は十五章より成り,いずれもプライマリ・ケアに重要な事項を取り挙げ,各章十ページ前後に簡潔にまとめている。本書の特徴は,次の点にあると思う。(1) National Academy of Sciencesのプライマリ・ケアの定義である①Accessi—bility医療の受け易さ②Compre—hensiveness包括的医療③Coordi—nation各専門科との調整④Conti—nuity継続的医療⑤Accountability医療に対する責任,いわゆるACC—CAの精神に基づいて,著者が実際に経験した事柄や研究データーを解析し,さらに各国のプライマリ・ケアの現状について紹介している。
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