書評
—著 ジョン・フライ 訳 日野原重明 紀伊國献三—プライマリ・ケアとは何か—医療への新しいアプローチ
西田 一彦
1,2
1神奈川県医師会
2日本プライマリ・ケア学会
pp.1100
発行日 1981年11月1日
Published Date 1981/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204843
- 有料閲覧
- 文献概要
Dr.Fryは懐しい人である。3年前,ライフプランニングセンター主催の"医学と教育に関する国際セミナー"での講演で受けた印象は鮮烈であつたし,その後神奈川県医師会にも来て戴いて親しくお話を伺つたことが咋日のように思い出される。昨年9月神奈川県医師会欧州プライマリ・ケア調査団が訪英の時にも,特別にレクチュアを受けている。それぞれ,今までにお聞きした話が集約され体系づけられたエッセンスが本書である。コンパクトな本であるが,内容はプライマリ・ケアのすべてが語られており,まさに"医療への新しいアプローチ"そのものである。今なぜ,世界的規模でプライマリ・ケアが叫ばれているのかを,単にイギリスの実情と経験から述べるのではなくて世界各国の動向と実情にもふれながら,各方面から具体例をあげてきわめて明快にしかも強い説得力で解説している。全体を流れているものは,日本語版序文に述べられている次の言葉「近代医学を自己批判的分析的に,また過去にこだわらずに見つめようとするものです。読者にも同じことを勧めたいのです。すなわち立ちどまり反省し,今何をしているかを検討し,果してうまくやれたのか,もっと他の方法でうまくやれないかを問い直すことです。」という厳しい自己批判の精神である。またそのことがこの本をすこぶる感動的なものにしており一気に読ませる魅力ともなつている。
Copyright © 1981, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.