Japanese
English
総説
ニューロピルの病理学
Pathology of the Neuropil
藤澤 浩四郎
1
Kōshiro Fujisawa
1
1東京都神経科学総合研究所神経病理学研究室
1Department of Neuropathology,Tokyo Metropolitan Institute for Neurosciences.
pp.233-260
発行日 1979年3月1日
Published Date 1979/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204381
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はじめに
ニューロピルの病理学とは新しい概念である。(註:新しい概念を提唱するのは,新しい事実が発見されたためであつて,それは一言に約言すれば,神経細胞体にはさしたる変化を表わすことなく,ニューロピルにだけ重要な変化の生じている状態のことを指している。)ニューロピル,すなわち古典的神経病理学において細胞間質と呼び慣らわされていた灰白質の部分であつて,これが実は神経細胞と神経膠細胞との両者の細胞突起が密に錯綜し,シナプス結合を初めとして種々の結合様式で相互に連絡し合い一大網状構造を形成していることが判つたのは,この20年来の電子顕微鏡的研究の所産である。ところで私共が通常問題にしている神経系の機能(たとえば運動効果発現とか,感覚情報処理とかさらにはいわゆる精神機能といつたもの)は個々の神経細胞の果している機能の単なる算術的総和ではなく,また勿論個々の神経細胞の特異的機能の表現でもなく,多数の神経細胞がある特定の組み合わせで連絡をとり合い(神経回路網)相互に影響し合うことにより達成される活動の総体的表現,すなわち個々の神経細胞の集約的構成と統合の結果であるし,かかる構成と統合の場がニューロピルであるから,ニューロピルとは神経系の機能を一次的に担つている構造ということができる。
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