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大動脈末端,左右総腸骨動脈への分岐点での血栓性閉塞により,次の一連の症状が現われることをR.Leriche (仏,1940,1948)が記載した。もつとも,これに関連した手術や血管撮影については,それよりも前(1923),あるいは後(1951)にも記している。症状とはすなわち,①男性においてはまず陰茎の持続勃起が不能となり,②両下肢が極度に疲労しやすく,③両下肢全体の萎縮が起こり,④他の皮膚,爪などの栄養障害はみられないが,⑤両下肢が蒼白となり,立位においてもみられ,臥位で足を上げればさらに象牙色または大理石色になる。
この②の中で,彼は両下肢の疲労しやすいことをわざわざ間歇性跛行ではないとことわつているが,その理由は起立しているだけでも下肢の脱力が起こることにあるらしい。しかし,歩行により急速に脱力をきたすことは,一種の間歇性跛行の性格をもつていると思れる。その後,大動脈末端部での閉塞性血栓性病変の報告は少なからずみられ,その中には間歇性跛行の名が稀ならず記されている。この大部分はCharcot型の下肢疼痛によつて生ずる間歇性跛行であるが,一方,このLericheの報告や他にも,Strausら(1954),やde Wolfeら(1954)の例にはDejerine型の麻痺による間歇性跛行がみられている。すなわち,この点を要約すると,Leriche症候群での下肢運動障害には多くはCharcot型の,時にDejerine型の間歇性跛行がみられると理解してよいと思われる。尤も,ここで興味をひくのはCharcot型の間歇性跛行は,Buer—gerの閉塞性血栓性血管炎でよく知られ,その血管閉塞性機転の多くは下肢レベルの末梢勤脈に見出されるが,この跛行を記述したCharcot(1858)の原著では閉塞性機転は総腸骨動脈の高さにあり,疼痛の他に同時に下肢の脱力を伴うことが記されている。Leriche症候群はそれより更に上位の総腸骨動脈の起始部のレベルに病変があることを考慮すると,跛行に関する上記の問題が理解できるように思われる。
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