症候群・徴候・28
Wallenberg (ウァレンベルク)症候群
平山 恵造
1
1順大脳神経内科
pp.63
発行日 1975年1月1日
Published Date 1975/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203647
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Wallenberg症候群は後下小脳動脈の閉塞性機転での延髄外側病変による症候群とされているが,その歴史においては,Adolf Wallenberg(独,1895)が先ず指摘したのは後述するような一連の症状である。そしてその後,彼自身が何年もの歳月をかけて,この解剖学的所見を明らかにしたのである(1901-1922)。すなわち,この症候群の特徴は,
突然の眩暈,嘔気,頭痛,顔面痛(病変側)を以って発病し,同時に嚥下困難,嗄声に気づかれるが,意識は失なわれず,患者を診察すると,病変と同側において,①軟口蓋,咽頭,喉頭(声帯)の半側麻痺(舌咽迷走神経疑核の障害)②顔面の温痛覚脱失と角膜反射消失(三叉神経脊髄路及び核の障害),③上下肢の小脳症状(脊髄小脳路の障害),④Horner症候群(網様体交感神経障害)がみられ,病変の反対側において頸以下半身温痛覚鈍麻とだるさ(時に顔面を含む)(脊髄視床路の障害)がみられる。これらを日を経て観察すると,軟口蓋咽頭の麻痺に拘わらず嚥下障害は急速に改善し,(反対側の代償による),起立歩行の可能な段階では病変側に偏倚するのがみられる。半身性温痛覚障害は上方から恢復する。この他に不定であるが,回転性眼振,しゃっくり,呼吸,脈搏障害をみるものがある。しかし,錐体路性麻癖や,第VI,VIII,XI,XII脳神経障害はみられない。
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