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編集後記
生田 房弘
pp.1227
発行日 1974年12月1日
Published Date 1974/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203638
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- 文献概要
疾病はみな平等である。しかし,どうも医師に好まれる疾病とそうではないらしい疾病とある様に見える。そうでないらしいものに,例えば脳腫瘍がある。脳腫瘍も立派な腫瘍であり,しかも起源細胞が異る各種のものからなる点など,腫瘍学研究の面でも有用と考えられるのに,文部省のがん特別研究でさえ一昨年漸く1つの班が結成されたばかりである。一般病理学や神経病理学者だけでなく,神経化学や神経生理学の分野でも同じ様な立場におかれている疾患のようである。これは,これまで脳腫瘍を取扱つた人々が,原因不明の故もあつてか,本来,約束ごとにすぎない腫瘍名のレッテルをはるという作業,分類し診断することを,研究することのように錨覚し,それにあけくれてきた歴史によるのかも知れない。この点では,原因不明の変性疾患のそれにやや似てもいる,もつともこの方は多くの神経学者に好まれてはいるが。
過去の研究史がどうであつても,脳腫瘍は神経系の各種細胞群が腫瘍性転化という,変性とはまるで正反対な,しかも重要な生物学的細胞反応様式の1つに基づいた結果であることに変りはない。
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