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先日は《Neurology Case Studi—es》をお送り下され有難うございました。早速拝読致しますと,本書はまことにClinical Neurologyの実力を養うのに,うつてつけの書物と存じます。というのは,CPCのように病理学的に裏付けされたものとは違つて,この書物はBed Side Teachingむけに,ぴつたりの本だからです。具体的に申せば,本書には55例のCase Historyが記されており,あたかも,そのCaseが目の前にあって,そのCaseの示す臨床神経学的所見に対して,どのような解釈をすべきか? また,その奥にひそむ病態生理をどう考えるべきか?診断の手順は? 鑑別診断は?適切な治療法は? といつた具合に書かれております。この55例は,神経学とその関連領域,—脳神外経科,小児神経学,神経放射線学などの領域の症例を含んでおります。読者はCase Historyを読んで,考え,解答せねばなりません。正解がつけられていますが,正解の根拠になる論文が引用されており,これを読むことによつて,さらに勉強ができる仕組になっております。私も,約15年前に,ECFMGの試験をうけ,アメリカ臨床医学の教育とは「このような反射的な解答を要求するものか!」と痛感し,日本の医学教育との違いを知らされました。いま,この書物をみて,まるでECFMGのNeurologyの試験をうけているような気持で真剣に考え,そして解答を出してみ,Neurologyの知識がだいぶ減退していることを知りました。
その意味で,私は,もう一度,この書物を勉強し,質問と解答を吟味し,up-to-dateな知識を整理したいと考えています。そして,ひろく,神経学・脳神経外科学・小児神経学などをご専攻の諸賢に本書をおすすめし,また現在trainingをうけておられる若い篤学の士,ことにこれから米国や欧州に留学して"他流仕合"を余儀なくされるであろう諸賢に,強くおすすめしたいと思います。
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