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下垂体腺腫Pituitary Adenoma
下垂体adenohypophysisの腺細胞から発生すると考えられる。全脳腫瘍の11%(東大),8%(Zulch),17.8%(Cushing)を占める重要な腫瘍である。第5図にみられるように主として成人(20〜50歳)に発する腫瘍である。小児にはまれである。下垂体腺腫は初め鞍内で増大し,トルコ鞍の拡大破壊をきたすが,やがて鞍隔膜を破り,視交叉や視神経に圧迫を及ぼす.第1図は右前頭開頭を行ない右前頭葉を持ら上げて視交叉部を露出したところで,視神経は被膜に包まれた赤灰色の腫瘍により圧迫され,扁平,蒼白となつている。通常視野はまず両側外上方から狭窄が始まり,徐々に両耳側半盲となる。視神経は一次性萎縮におちいり,視力は低下し,ついには盲となる。さらに鞍上に拡がれば視床下部を圧迫し,この部の症候群を現わす。また上記のほか種々の内分泌機能の障害が認められる。
嫌色素性腺腫chromophobe adenoma,エオジン好性腺腫eosinophilic adenoma,塩基好性腺腫basophilic adenomaがあり,ほかに前2者の混合型であるmixed adenomaがあり,また悪性のmalignant adenomaがある。chromophobe adenomaが最も多く,腺腫の70〜80%はこれに一致し,10〜20%がeosinophilic adenomaであり,ほかの少数がmixedないしmali—gnant adenomaである。basophihc adenomaははなはだまれでCushing症候群.と結びつけて考えられている。eosinophilic adenomaは小児では巨人症gigantism, 骨端線が閉じてからでは末端巨大症acromegalyを起こす。他の腺腫はすべて種々の程度のhypopituitarismを呈する。
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