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I.はじめに
慢性硬膜下血腫は脳神経外科における最もありふれた疾患の一つであり,その手術成績および予後はきわめて良い。したがつて慢性硬膜下血腫は脳神経外科的手術によつて治療すべきものであるというのが医学的常識であり,内科的,非観血的にそのすべてを治癒し得るなどというならば少なくとも現段階においては笑い物にされるのがオチである。しかし今まで外科的にしか治療し得なかつた疾患を外科手術なしに治癒せしめ得るならば,脳外科医の手術適応疾患が減少しても医学徒としてこれにすぎる喜びはない。われわれは最近約1年間に経験した8例の慢性硬膜下血腫全例に以下に記す非観血的方法によつて治療を試み,脳血管撮影による追跡と共に最終的には試験開頭(8例中6例)によつて全例に血腫の消失あるいは極度の減少を見ることができたので報告する。もちろんこの連続8症例が非観血的療法によつて治癒し得たとしても,まだすべての慢性硬膜下血腫をこの方法で治癒せしめ得るとは断定できないが,われわれはこれら8症例の経験からその見込みは十分あると考えている。またこの治療方法による後遺症状が絶無かどうかもまだ短期問の追跡であるのでまつたくないとは断言し得ないが,今のところでは再発その他を見たものはない(第1表)。
Eight cases of chronic subdural haematoma in-cluding two severe patients have been treated with non bleeding therapy by osmotherapy chiefly using 20% Mannitol.
In the all cases the content of haematoma was disappeared or extremely decreased by the treatment for 1 month to 4 months.
By the osmotherapy, the change of character, men-tal disturbances and other complications were not happened at the follow up study from 3 months to 15 months after their discharge.
The thinking process to the performance of this treatment and healing mechanism of the haematoma were discussed.
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