グラフ
酵素の組織化学
大谷 武彦
1
,
鈴木 裕
1
1慶応義塾大学医学部病理学教室
pp.768-769
発行日 1967年11月15日
Published Date 1967/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542916237
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最近の酵素化学の進歩はいちじるしく,臨床分野においては,癌の補助診断,血液疾患の諸検査にも酵素反応が広く応用されるようになっていることは周知の通りである。組織化学領域で酵素反応を扱う場合,その生化学的なメカニズムをすぐ形態学的に観察して理解する為にはあまりにも技術的に困難な問題が山積している。たとえば従来の鉛などの重金属塩沈澱法ではしはしば組織細胞と結合し,基質を含まぬ場合であっても何らかの反応結果と誤認するような非特異的着色反応の幣害があった。現在では幸いにも電子顕微鏡による細胞の微細構造が明らかにされつつあることと同時にナフトールをbaseにした基質,およびアゾ色素の合成技術の進歩により酵素反応産物を特異反応として適確に捕捉し顕微鏡下で観察し得るようになった。しかしながら実際の臨床面に酵素組織化学を応用する場合,たとえば癌組織における酵素活性の変動から,癌を補助的に診断し,予後を判定しまた治療効果の判定を試みようとするには生化学的な酵素反応の結果とはまた異った観点から,慎重な検索と"意味づけ"をする必要があるように思われる。ここではただ単にわれわれが行なっている加水分解酵素を中心にした酵素染色方法(技術解説の項参照)の内から代表的な二,三の酵素反応を生検材料および実験動物例について紹介するに止めたい。
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