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特集 慢性硬膜下血腫(第24回日本脳神経外科学会シンポジウム)
ふたたび「慢性硬膜下血腫」の成因について
The Further Contribution to the Pathogenesis of the "Chronic Subdural Hematoma"
近藤 駿四郎
1,2
1日本医科大学
2東京労災病院
pp.685-688
発行日 1966年7月1日
Published Date 1966/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406202074
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筆者がいわゆる「慢性硬膜下血腫」について最初の論文を発表したのは1956年であるが,その時には「外傷性慢性硬膜下血腫」という表題をつけた。当時この論文をまとめるために内外の文献を猟渉したが,このものの名称,内容が論文によつて区々であり,その整理に困難を感じた。その理由の一つはVirchow以来使われてきた"pachymeningitis haemorrhagica interna"または,"haematoma durae matris"というような表現の内容と"subdural hematoma"という表現の持つ内容の異同が当時筆者にははつきり把握できなかつたことであつた。これは当時の筆者の本症に対する知識の浅薄さを告白しているようなものであるが,事実その頃の多くの文献はしばしば急性硬膜下血腫と慢性硬膜下血腫とが同一の論文にあまりはつきりした区別なく並列的に記載されており,この二つの血腫の型は同一な出血源を持つものの単なる時期の差によつて生じる血腫の形態学的な違いをみせているに過ぎないという根本的な考え方のうえに立つて書かれていると思われるものが多かつた。当時の日本の文献についてもこの傾向は同じでそれは現在でもなお続いている。
しかし,筆者の本症に関する知識が進むにつれて,実際臨床的に本症を観察してみると,それまでまつたく単に「外傷性慢性硬膜下血腫」としてなんの疑問も持たなかつた本症についていろいろの疑問を生じてきたのである。それは本症を果してその当時多くの人々が考えていたような「慢性硬膜下血腫」—しかも外傷性一としてのみ理解してよいであろうかということであつた。
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