Japanese
English
薬剤
神経科領域におけるパンテチンの臨床
CLINICAL EFFECTS OF PANTETHINE ON NEUROLOGICAL DISORDERS
高坂 睦年
1
,
大和 人士
2
,
人見 泰
2
,
西紋 孝
3
Mutsutoshi KOHSAKA
1
1岡山大学医学部神経精神科
2岡山済生会病院
3西紋病院
1Dept. of Neuropsychiatry, Okayama Univ. Medical School
pp.521-529
発行日 1965年5月1日
Published Date 1965/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201851
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I.緒言
30年前,アメリカのオレゴン州大学Williamsら1)は広く動植物界の組織内に酵母の発育を著明に促進させる物質があることを発見し,これをパントテン酸(PaA)と名づけた。人体においては,肝に最も多く含まれ,母乳には2〜28γ/cc,リコール中には38γ/cc,汗には4〜30γ/cc,血液中では,血漿中に遊離型として存在し,血球内ではほとんどがCoAとして結合型で存在するという2)〜5)。これを欠乏させると,動物においては発育の抑制,体重増加の停止,脱毛,不安状態,昏睡,痙攣,神経変性,歩行障害を起こす6)7)。人では,易疲労,血圧不安定,頻脈,眩暈,手足の痺れ感,自発痛,歩行障害,2次的感染などを起こすという。PaAはS. M.やINAHによつて起こつた耳鳴,難聴に有効であり8)9),その欠乏は視量に関係し10),またいわゆるburning feetと呼ばれている一種の栄養失調性神経血管障害にはPaAが有効であり,これはPaAの欠乏によつて惹起されるものと考えられている11)〜13)。PaAがribose, adenine, ATPなどと結合してCoAの形で体内代謝の重要な役割をはたしていることは周知のとおりである。
Snell14) や Craigi5)らは PaAとβ—mercapt-ethyl—amineの結合したものは,乳酸菌成長に対して強い力価を持つことを発見し,これをPantetheineと名づけ,そのdisulfide型をPantethineと名づけた。
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