特集 第23回日本脳神経外科学会・I
シンポジウム:脳細胞機能
脳細胞機能の電子顕微鏡的観察
谷 栄一
1
1京都大学医学部脳神経外科
pp.223-227
発行日 1965年3月1日
Published Date 1965/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201795
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電子顕微鏡で観察し得る脳細胞の形態は,原則的に一般細胞と同様の核および細胞質小器官の構造を示ずほかに,独自な脳機能に関係した特有な構造を有する,一方,脳血管および脳表面は大部分がグリア細胞によつてとり囲まれ,神経細胞と血管または髄液空との間は150Å〜200Åの細胞間隔を保持しつつ,相互に密接した多数のグリア細胞とその突起によつて占められている。Horstmann & MevesはScylliohinusにおける細胞外腔は形態学的に換算すると5%を超えず,哺乳類ではおそらくこの数値を少し超えるものとしている。一方,Woodburyによると,細胞外腔全容積を示唆するsulphate spaceは5%である。これらの形態学約特異性は,細胞の核および細胞質小器官の生化学的研究結果とあいまつて,各脳細胞自体は一般細胞において観察される細胞代謝以外に,それぞれ特有の機能を有し,かつ各脳細胞間の密接な相互関係を示唆するものである。HydénはDeiters氏核の神経細胞とその近傍グリア細胞,特にoligedendrocyteとの間に,RNA,蛋白質および呼吸酵素の変化に,両者がひとつの機能単位とみなし得る密接な相互関係のある事実を観察している。従つて.種々の障害に起因して神経細胞が変化をきたす場合は,特にその近傍グリア細胞にもなんらかの変化を伴うものと予想し得る。
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