連載 神経病理アトラス・11
中毒性中枢神経疾患の病理—その1
白木 博次
1
1東京大学脳研究所
pp.100-107
発行日 1965年2月1日
Published Date 1965/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201773
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有機水銀中毒
1.水俣病:1953年から1961年にかけ,水俣湾とその近海沿岸の,主として漁民間に発生した水俣病患者は89,死亡36に達した①。原因は,日窒水俣工場のアルデヒド酷酸施設廃水中のmethyl-mercury chloride②に汚染された魚介の摂取による有機水銀中毒で,ネコ,水鳥,カラスにも発病をみた。なお汚染貝から分離された毒物はmethyl-methyl-mer—cury sulfideで,やや構造が異なるが,両者ともアルキル系有機水銀の点で一致する。1960年1月,排水浄化設備(cyclater)が運転しはじめてから,最終段階の排水中の水銀は皆無となつたが②,それ以前の海底泥と貝中の水銀量は,工場排水口付近(百間港)に最高,またかなり離れた場所でも,対照湾にくらべ(0.05〜0.06ppm)明らかに高値を示した①。なお1957年に工場排水口が水俣河1.1付近に変更され,1959年,それまで皆無であつた同河沿撰漁民から,5人の新患者が発生した①。
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