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Behcet病は3主徴の他に,関節症・結節性紅斑・皮膚および消化管潰瘍・血栓性静脈炎などを合併することがあり,また中枢神経症状を呈する。著者例は50歳黒人男。43〜49歳の間,口唇潰瘍・舌口腔口蓋の潰瘍にて数回来院。48歳外耳道癤。49歳陰茎潰瘍,梅毒(-)。2日前より頭痛・左上下肢脱力あり,増悪しつつあり,歩行緩慢,左上肢は挙上不能にて来院す。左側spastic paresisで患肢深部反射増強。血圧170/130,中等度動脈硬化を眼底にみる。心拡大し心尖に収縮期雑音あり。左顔面にupper motor neuron型脱力あり,舌は左方に偏倚す。知覚異常・小脳障害なし。血液に特記すべき異常なし。微熱があつたが数日で去り,左側脱力症状漸次回復に向う。口腔口蓋口唇アフタ生ず。やがて浅眠状で複視を訴う。両側咬筋・直腹筋の脱力,顔面知覚鈍麻,構音障害などあらわる。プレドニソンにてやや改善したが,それを中止すると顰面,左両肢のchoreoathetoid運動生ず。以上のような神経症状が軽快したり,また増悪したりである。Behcet病で神経症状を著明に呈したという文献報告が今日までに37例あり,著者例を加えて展望するに,神経症状頻度はBehcet病の10〜25%,男に多く平均37歳。Behcet三徴出現より数週ないし長年の間隔をおいて神経症状発来す。その発現は急速のことも緩慢のこともある。所見は一定せず,多くの脳神経の麻痺と脳幹障害との合併が多い。痙攣(局所的または全身的)知能障害・失語・半(四半)麻痺・偽球麻痺・錐体外路症状・髄膜刺激症状などが普通である。小脳症状・脊髄症状は稀にのみみられる。髄液にpleocytosis(<60個)をみる。主に好中球・リンパ球。蛋白(>50mg)増加もしばしば。総蛋白のみでなくγgl増加という例もある。圧は一般に正常。糖正常域。気脳で脳室拡大をみる例あり。血管写で脳内静脈血栓をみた報告あり。蜘網膜癒着も報ぜられている。これら症状は間歇的に増悪し,ときにまつたく自然治癒する。しかし3割以上は症状進行して死亡する。多発硬化症・動脈硬化性変化などを鑑別すべきであろう。治療は副腎皮質ホルモン。
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