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〔I〕運動神経終末の個体発生学的研究(誌上)
Bielschowsky鍍銀法鈴木氏変法により人胎児四肢筋(腓腸筋に)おける運動神経終末の個体発生を観察した。胎生10週の筋組織では未熟な筋細胞が多く筋核は筋線維の中軸部に柱状に並ぶものが多く横紋も認めない。運動神経は著るしく細く分枝,吻合を営みつつ筋線維の間を走るが両者の間の連結は証明し得なかつた。11週でも筋線維はなお,未熟であるが横紋が現れ始め,14週で横紋が著明となる。しかし筋核が偏在位をとるようになるのは16週の標本に初見され成熟型筋線維の様相を呈する。この頃までは運動神経は筋線維の間に混在して走るだけで両者間に特別な結合関係を証明しなかつた。運動神経は走行中に幾多の輪状,網状構造,線維性弛緩を示すがかかる構造が神経終板の原器であるとする説には賛同し難い。神経終板の原型と思われるものが認められるのは胎生17週でありこの頃,原形質に富むSchwann氏細胞が2コ集りその間に小終網構造を持つものを観察した。本Schwann氏細胞核は円味を帯び筋間神経束内の同核とやや趣きを異にするが染色態度は同様である。また,筋核ともほぼ確実に鑑別しうる。従つて発生初期の終板部には筋核は参与していないように思われる。一般に発生初期の終板は神経束から短い神経線維枝がでてその先に連なるものが多く長い独走線維の先に連なるものは見出しにくい。19週頃,終板部に小隆起を呈するものが見られるが終枝の分枝状態は簡単である。胎生全期にわたり終網の形は円形,多角形等種々であるがおおよそ簡単なものが多く大きさもあまり大きなものはない。終網の数は1〜3である。終網の輪廓は胎生末期程明瞭になる傾向を認めた。新生児終板においても核数は2〜3であり筋線維経が小さいことによると思われるが,新生児では長い神経線維に連る終板が目立つて増え,大きさ以外の点においては成人のそれと大なる差を認めない。
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