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脳外科研究会が,昭和23年,故斎藤真教授の主唱で創始されて以来,研究会として数年会合が繰り返され,その後日本医学会から正規の分科会として公認され,現在の日本脳神経外科学会まで全体を通算すれば,実に今年でその第21回目の学会となつたのである。顧みればこの間の本学会の発展は実に順調,円滑しかも快速であつた。その間に臨床にも研究にも,領域は驚くべく大きくなり深まつてきた。これは一国医学として必要不可欠の専門医学であるという事実の正しい認識が最も重要な基礎的勢力となつているのではあるが,学会の創立が時宜を得たこと,脳外科学の実際にたずさわつた人々の熱意と努力,それにつづく若い有為な研究者の数多くが引きも切らず加速度的に加わつてきたこと,外科の一分科として実地診療上重要なばかりでなく,医学としての興味がきわめて深い専門であつて,しかも外科学をとり扱うもののみの興味に留まらず,全神経学の進展の上において画竜点晴的の意味をもつた科目であるために,外科以外のあらゆる神経学分野の臨床,基礎の医師,研究者が会の当初から多数来り加わつて,相互にその知識のGiving and Receivingの実をあげつつ進むという形態が,非常に大きい貢献をしていると思うのである。これは会の創始当初から今日まで少しも変らず,学会の評議員にも会員にも脳外科医は当然のことながら,常に内科,精神科,耳科,眼科,小児科等々における神経学関与の人々は申すにおよばず,解剖,生理,病理,化学,薬理等々の基礎的神経学者が意欲的に協力され,それぞれその立場からの重要な研究を発表し,質疑,応答,討議をかさね,けつして単なる臨床脳外科医だけの独善に陥るおそれのない構成をもちつづけている結果であつて,この学会の構成は今後も崩さるることはないものと信じている。当然の結果として,次々に神経学において発見,発明され創意工夫をこらされた新知識はただちにすべての会員に伝えられ,これは脳外科診療にあるいは直接に,あるいはmodifyされ間接的に大きな進歩となり,またこの得た知識は限りなくっつく脳外科における貴重な人脳の幾多の所見,知見として,あるいは神経生理にあるいは化学にあるいは病理に,あるいは他の臨床専門に反映し,次の研究発展に大きな寄与をしているのである。しかも戦後は諸外国の脳外科学会,神経学会と国際的な交流が盛んになり,多数の会員が海外の学会に参加し,講演し,また学会としても諸外国の関係学者を招聘し,その説に耳を傾むける機会も多くなつて,いつしか日本においても脳外科の国際学会開催を期待し得るにいたつた。これらについての多数会員の精励と努力は弥々本学会の価値を高からしめつつある。
私のみでなく,会員,関連科目の友人らと雑談的には本学会にもつと脳外科に即した実際問題に重点をおき,純実験とか基礎神経学の問題はむしろ他のそれぞれの専門会合に発表したほうがよいのではないかという疑問や希望もなかつたわけではない。現に外国の脳外科学会の内容は演題も少なく,また脳外科問題が大部分を占めている。
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