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特集 脳腫瘍の病理
〔3〕脳腫瘍の実験的研究
EXPERIMENTAL STUDIES ON BRAIN TUMORS
川合 貞郎
1
Sadao Kawai
1
1群馬大学医学部病理
1Dept. of Pathology, Gunma Univ. School of Medicine
pp.653-656
発行日 1962年8月1日
Published Date 1962/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201297
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このシンポジアムにお招きいただいたのは,私が神経膠腫の実験的研究をやつているからであろうと思うので,まだ研究途上にある仕事ではあるが,今日までに得た成績の一端を紹介させていただきたい。
神経膠腫の実験的研究は,激しい仕方で人工的につくられた腫瘍についてのものではあるが,人の神経膠腫の細胞学的な,あるいは分類上の諸問題の解決に重要な手がかりを与えるものと考えられる。Zimmerman博士らの実験的研究は,人の神経膠腫に対応するいろいろの型の神経膠腫をつくりだし,移植実験を通じて,発癌物質による諸種のグリア細胞の同時的な腫瘍性増殖の可能性を明らかにしている。また神経膠腫の組織型が,発癌物質の挿入部位と,一定の関係をもつということを指摘したことは,従来人体の神経膠腫でいわれてきた脳腫瘍の局在の問題について,きわめて示唆にとむものであり,また成熟マウスの小脳に髄芽細胞腫を作り,これを小脳の皮質の顆粒細胞層から発生したNeuroblastomaであるとしたZimmerman博士の見解は,胎生性格の強い神経膠腫とされていたこの腫瘍の組織由来についての従来の考え方に重大な疑義を提起したものといえる。私たちもここ数年来,Methylchoranthreneの脳内挿入による実験的脳腫瘍の研究を続けているが,ここにその実験成績を要約して報告したいと思う。
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