第3回神経病理懇話会 主題 脳腫瘍
〔主題講演3〕実験的脳腫瘍
西川 喜作
1,2
Kisaku Nishikawa
1,2
1慶応義塾大学医学部神経科教室
2精神医学研究所附属東京武蔵野病院
pp.37-57
発行日 1963年1月25日
Published Date 1963/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901949
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はじめに
脳腫瘍の実験的研究は,その生化学的,病理組織学的,血清学的さらにまた治療学的にみても,現在の行きづまりつつある脳腫瘍の研究方法に,新らしい重要な方法の一つを提示するものと考えられる。これは発癌物質を用いて脳腫瘍を発生させ,その病理組織学的追求をするのみならず,遺伝,生物学的追求とともに腫瘍殊にグリオームの制癌物質による治療や,新らしい他の治療方法に対する場と材料を豊富に提供するものである。
もちろん,発癌物質を動物に用いて作らせた脳腫瘍である以上,人間の脳腫瘍とは全体としてある程度の相違のあることは事実であつても,グリオームの腫瘍細胞と,その性質をとつてみれば全く人間のとは変りなく,Zimmermanもいつている如く,実験的グリオームが人間の脳腫瘍を再現する,との言葉も重大な意味を有しているわけである。
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