Japanese
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特集 脳の生化学
興奮物質および抑制物質の脳波に対する影響
EFFECTS OF EXCITATORY AND INHIBITORY SUBSTANCES ON E. E. G
上村 彰一
1
Shoichi Kamimura
1
1慶応義塾大学医学部生理
1Dept. of Physiology, Keio Univ. School of Medicine
pp.479-480
発行日 1962年6月1日
Published Date 1962/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201264
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- Abstract 文献概要
脳波は基礎医学的にも臨床医学的にもさかんに研究されているが,いまだにその発生機制は分らない。それにもかかわらず脳髄内諸現象が脳波に影響を与えることが分つているので,脳波を測定することによつて,脳波に変化を与える諸機制を研究することが十分できるのである。本体が分らないで,応用の道だけが分つているといつてもさしつかえない状況である。病気,特に中枢神経系の病気といかなる関係があるかは,脳波本体が分らないかぎり決定的なことはいえない。しかも臨床的にも特殊の病気と関連があるというのは不適であるといつて良い。ただ,てんかん脳波にきわめて典型的で逆に脳波測定によりてんかんを診断し得るから臨床的には,この点が唯一の手がかりである。われわれは長い間てんかん痙攣研究に犬を用いて行なつてきたが,その結果高等動物脳髄内(特に運動系)の抑制物質はおよそγ—amino—β—hydroxy butyric acid (GABOB)であると信ずるにいたつた。従つてGABOBをてんかん治療に用いたら,どうかという研究が進められ,結局,総括的には次のような結果になつた。
すなわち,1か月1回以上の発作を起こすてんかん患者65名の内,1/3はGABOBを数日用いることによつててんかん発作を完全に鎮め得る。残り1/3は発作回数が減ずるから臨床的には,やや良いが,理論探求の上からは不適当である。さらに残り1/3にはGABOBはなんらの効果も与えず,病勢はまつたく不変である(栖原1))。
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