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定位的脳侵襲は一般化してきたが,しかし限局性に脳組織を傷害する方法には尚改良の余地がある。現在は電気凝固法,又は薬液注入法が用いられているが,これらによる破壊巣の形や大きさを常に一定にすることはむつかしいことである。これから述べる集束超音波による選択的限局性脳侵襲法は定位的侵襲法となるのに必要な条件を十分にそなえていると考える。
さて超音波の音束を第1図のシュリーレン写真にみられるように集束すると,その音波強度は第2図に示すように,超音波を発生する振動子表面では3w/cm2であるものが,音波レンズの焦点を中心として,限局した部位に飛躍的に強度の大きい音場が現われる。これを焦域とよぶが,その中心では750w/cm2の強度に達する。この超音波を組織内に投射する時,cavitation現象もおこつてくる可能性があるので,焦域の軸長(レンズの軸上に於ける焦域の長さ,即ち長径)は却て短かくなる。この時焦域の直径(軸長方向に垂直な面に於ける幅)は変らない。第3図に,集束超音波1460KC,750w/cm2,7秒間投射による猫の脳実質内の破壊巣を示すが,その境界は鮮明で,長楕円体型で,それは焦域に一致し,大きさは約6mm×3mm×3mmである。又複数投射による隣接破壊巣の一部が,白質内と皮質とにみられる。第4図には超音波投射時間と焦域の大きさとの関係を示してあるが,投射時間を長くし,これによつて投射量を大にしても破壊巣は一定度以上に大きくはならない。即ちそれは焦域の大きさに一致しているのである。しかし超音波周波数を小さくすると,その焦域の大きさは大きくなり,従つて破壊巣の大きさを調節できることになる。973KCの場合,焦域の大きさは1460KCの時に比して約2倍大になる。尚又複数投射によつても調節可能である。
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