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あとがき
A
pp.1075
発行日 1960年12月1日
Published Date 1960/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201021
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菊花香る秋晴れの文化の日,文化勲章が岡,田中,佐藤,吉川の4氏に送られた。
戦後の廃墟の中から新たに文化国家をシンボルとして立ち上り,ここにはや13回目の受賞式を迎えたわけである。また,その間に文化国家としての復興も目覚ましいものがあつた。しかしながら,私達の身近かには文化からほとんど遠い陽の当らない場所が今なお数多く残されていることを見落してはならない。今年の受賞者の岡潔氏にしても世界的著者の学者でありながら,受賞者に決まるまでは識つている人の方が少なかつたとのことである。かかる立派な篤学の士をこれまで知らなかつたのは私達はもとより国としても全く迂闊である。岡氏が文化勲章の受賞に際して,自分の業績が世に知られたことよりも功労年金が戴けるようになつたことの方が嬉れしい,と素朴にもらされたそうであるが,これもわが国において如何に学者が不遇であるかを物語る一つのエピソードに他ならない。すべての学究が後顧の憂いなく研究に励げめるような処遇を国として考えなければ文化国家も泣くであろう。文化の日に因んで所感を述べあとがぎとする。
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