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脳腫瘍其の他の脳外科的疾患に対する側脳室造影術,脳室油撮影術を始め,其の他の手術侵襲後に,たまたま重篤なる脳圧の昂進を起す事はよく知られている事であるが,これに対する処置としては患者の一般状態から脳圧昂進を推定し,高張糖液の静注,側脳室穿刺,及び体位に依る脳圧降下法等が行なわれて来た。然しこの脳圧昂進に対する最も大きな目標として知られているCushingの現象(脳圧昂進に伴ない血圧上昇,徐脈,脈圧の増加を来す1)2)3))は最近次々とそれに疑念を持つた発表の出現があり,其の他の症状,現象を目標として脳圧昂進を推定しなければならないとしている学者も多いのである1)4)5)6)。余も数10例の脳手術後の脳圧消長の観察に依り7),相当高度の脳圧上昇がなければCushingの現象は見られない。即ち800mmH2O以上になるとどうにかCushingの現象に従うものもあるという事を経験しているので,脳圧昂進を推し測るのには一般状態を綜合的に見て判断するのが最も良い様に考えている。重篤な脳圧1000mmH2O附近になると大部分の患者は幻視を伴ない,不安となり意識も混濁し,尿失禁も見られる様になるのであるが,然しこれ又個人差が大であり,600mmH2O位で早くもこの様になる人があるし,1000mmH2Oでも割合に平気な人もあるのであるから,この重篤な脳圧昂進をどの様にして推定するかは一寸困難な事である。然しその場合持続的に脳圧を目で測定し,又は電気的に記録し,それに対する適切なる処置を行い得ればこれに越した事はないのであり,脳外科の手術成績もより上昇せしめ得るのである。教室に於ては,一昨年の暮より手術後持続的に側脳室に直径2.5mmの「ポリエチレン」管を挿入し,(図1)これを「マノメーター」に連結,時々刻々変動する圧を観察する事に依り脳圧の昂進せる場合は,これに対して髄液の排除,高張糖液の静注等を行ない,その効果を目で見,又後出血に依る急性脳圧上昇もこれに依つて発見,適切な髄液排除,止血剤の投与,又は再手術に依り患者を救い得る等大きな効果をあげている。外国では以前より用いられている様であり,1937年S. D. Werden8)は脳外傷の患者に対して経脊椎法により「ドレナーヂ」を行なつているが,感染等の点で芳ばしくなく,1939年E. R. Schmidt9)は側脳室「ドレナーヂ」を行なつているが開放性ではなかつた。又1941年F. D. Ingraham10)は特別の側脳室「カニユーレ」を用いてこれを「イルリガートル」に連結,「ドレナーヂ」を行なつている。1943年A. S. Crawford11)は側脳室「ゴムカテーテル」(図2)の出口に感染を防ぐゴム製の器具を考案装着し,J. L. Poppen12)は側脳室「ドレナーヂ」の効用を説いている。1948年F. Robinson13)は一装置を考案しているが一寸繁雑であり,消毒等も困難ではないかと思われる。又1951年E. A Bering14)も一装置を考え,26例(図2)の患者に平均8日間「ドレナーヂ」を行なつて良好な成績を收めている。当教室16)でもこの装置を改良使用し良好な成績(図2)を見ていたが,容積が大きく消毒等取扱い不便であり,又脳圧測定の場合には別の装置と取替えなければならなかつた。又京大荒木教室15)でも側脳室「ドレナーヂ」が行なわれているが,この装置では「サイフオン」の理で脳圧が陰圧になる可能性があると考えられる。尚脳圧が「マイナス」になると,頭痛,眩暈,嘔吐,痙攣,偏?,意識障碍,遂には混迷,死亡に到るものもあると記載されており17)18)19)20),特にP. Gloorは持続的側脳室「ドレナーヂ」を行なつて5日目に圧は0となり,激しい頭痛を訴えたが,低調液の静注に依り脳圧上昇し,激しい頭痛より解放されたという症例を報告している。髄液の不足に依り脳の浮力が減じ,脳組織は移動し易くなり,中枢刺激となり,又脳底血管の圧迫が起つて大きな障害を来す様になるものと考えられる。余はこれ等の事を充分に考え,又感染防止という事も念頭におき,次の様な装置を考案し,より簡便に持続的に脳圧を測定,必要に応じてはある一定の圧を保ちつゝ髄液を持続的に排除し,術後脳圧の消長に対して多くの知見を得ると共に,又よりよい成績をあげつゝある。
先ず側脳室に挿入する直径2.5mmの「ポリエチレン」管は,先端に側孔を設け,前日より重炭酸ソーダ水にて煮沸消毒を20分間2回行ない,充分消毒すると共に,刺戟物を除去し,使用前は又20分間蒸溜水にて煮沸消毒を行なつている。術に際しては先ず,金属側脳室カテーテルで側脳室前角,又は後角迄の深さ及び方向を定め,2号縫合糸を2, 5mm「ポリエチレン」管のその深さの所に軽く結び,静かにその管を挿入する。挿入したならばその縫合糸で皮下筋膜に一針固定し,皮膚の全層縫合を行ない術を終る。この時脳室撮影を行なう時は空気と髄液を置換するし,脳室油撮影の時はこれから油を注入する。さて病室に運んでこれも2.5mm「ポリエチレン」管と同様に処置した径4mm「ポリエチレン」管(B)及び其の他を無菌的た2.5mm「ポリエチレン」管(A)に連結する(図3)。而して2.5mm「ポリエチレン」管の先端と図の(c)の高さの差を約15cmに保ち,(H)に「マノメーター」(I)を連結,(F)に1500倍昇汞水を深さ1cmに入れ,ペツトの脇に装置する。持続的に脳圧を約15cmに保ちたいと思う時は,(E)(D)の「コツク」を開放しておくと,髄液はその圧を越えただけ(C)より落下し,(D)を通り(J)に落下する。この時若し(E)のない場合は,髄液が管壁を伝わつて落下する時は問題でないが,(D)の断面を髄液が満してしまうと,そこに生じた水柱の高さに依り側脳室からどんどん髄液を吸い出す結果となり,陰圧となつてしまう。そこで(E)をとりつけて(C)から出る液は(A)(C)の高さの差の圧力とは無関係に(E)からの一気圧の圧力で(J)に落下する様にして常に(A)(C)の圧力が15cmに保つ様にしたのである。なお(F)に昇汞水をいれて(E)管の下端から泡状になつて出る空気を消毒し,無菌という事を徹底せしめた。次は髄液圧を種々の実験等を行なう為,持続的に測定せんとする様な時は,(E)(D)の「コツク」を閉めると側脳室の圧力は(H)を通つて(I)に伝わり「マノメーター」を動かす。又必要によつては(E)にStraingauge Manometer等の自動的記録装置を装着し,種々脳圧の研究を行なう事も出来るわけである。
Ventricular drainage as a treatment of inc-reased intracranial pressure is by no means a new concept in foriegn countries. In recent years success has been reported employing the ratio-nale of continuous ventricular drainage with varying types of aseptic closed systems, but there have been found only a few reports about it in our country. It was emphasized that this procedure has many conveniences for the postoperative treatments and care of neuro-surgical cases. The author devised a new apparatus for continuous measuring of cerebro-spinal fluid pressure, being in mind about Aseptic, Preventation of the excessive incre-asing and decreasing of intracranial pressure and Conveniences for use. A Polyethylene ca-theter (2.5 mm in diameter) is used to be in-serted into the lateral ventricle under strict de-sinfection. This catheter is connected by means of a glass adapter to flexible rubber tubing (about 45 cm in length) to the appartaus, as shown in Fig. I. This apparatus is usually so positioned, that the curved top of the glass tube (C) is about 15 cm above the end of ca-theter (A). But any desired pressure can be maintained by rising or lowering this apparatus. The tube (E) is used for prevention of the negative pressure in crainum due to the Siphon phenomena. A small amount of corrosive sub-limate solution (F) is used for sterilization of the air that comes from the tube (E).
It is possible to measure intracranial press-sure, if the tube (E) is closed. When the tube (E) is connected with Straingauge-Manometer and the tube (D) is closed, the pressure curve can be mapped.
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