--------------------
解離性内頸動脈瘤によつて精神異常をきたした一剖檢例
白木 博次
1
,
橫井 晋
1
1東京大學醫學部精神病學教室兼腦研究所
pp.154-158
発行日 1953年5月1日
Published Date 1953/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200345
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
われわれは最近,左内頸動脈の解離性動脈瘤によつて精神神經系の異常症状をきたした一例を經驗したが,生前には全くその存在を考えることなく,臨床的に腦溢血或は腦軟化と診斷していたものであつたが,剖検によりはじめて明かとなつたものである。内頸動脈の動脈瘤自體はそう珍しいものではなく,またその局在からも當然考えられるように,視床下部,腦下垂體漏斗部,視神經などを下方から壓迫することによつて,同領域の腦腫瘍ようの臨床像をあらわすことはよくしられており,しばしば腦血管撮影によつてみいだされることがある。しかし多くは慢性の經過をとるものであり,また一度破裂すると,すぐさま死亡するのを例とする。しかしこの症例のように,明瞭な前駆症状なしに,卒中よう發作をもつて突然はじまり,すぐさま死亡することなく,ある期間生存しえたことはこの動脈瘤が解離性のものであつたためであるが,このことはそれ自體きわめて珍しいことである。そこでその臨床像と病理解剖像の概要を報告し,23の考察をあわせ行つてみた。
Copyright © 1953, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.