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はじめに
20世紀の医療は,feedback controlled management型の医療である。時々刻々変わる手術環境・状況において適切に対処するために,直感的な感や手術経験が生き,神の手とも形容される職人芸の世界が最高でありファインプレーが賞賛される世界でもあった。
21世紀の医療は,feedfoward controlled management型で,医療の安全性と確実性,治療の質を優先し,リスクを管理すると同時に,リスクを評価しながら実行する先行予測制御型医療である。提供される手術は,客観的な情報に基づくデジタル手術である。当然,戦術的には神の手に代表される治療技術や微細操作技術(マニピュレータ手術・ロボット手術),標的治療技術,精密治療技術が必須であることはいうまでもない。戦略的には手術に必要な医療情報は画像情報とともに統合可視化されて,手術チームに提供され,手術スタッフ間で共有されるのである。事実を先入観もしくは経験で判断する医療から,原子力の世界でよく使われている確率論的安全性評価(PSA:probabilistic safety assessment)の手法に代表される,知識(科学・根拠・データベース)に基づき決断し,実行する(知識があればリスクのある決断も取れる)医療への転換である。
医療の工程管理を考えると医療ディペンダビリティ(dependability)が重要である。ディペンダビリティとは,対象とするシステムやデバイスの提供するものが,正確で信頼でき安心して利用できることである。手術における術中モニタリングは,ただ術中の環境をモニタリングすれば良いということにはならない。ディペンダブルなモニタリングシステムを構築するには,使用環境が厳密に定義された閉じたシステムではなく,手術環境の変動に対応できる開いたシステムの構築が求められる。
センシング技術とモデリング技術に関しては,「手術環境」が新たな情報処理対象と要素技術(センシング技術,モデリング(シミュレーション)技術,支援技術)を統合することで,手術環境でセンシングし,モデリングし,支援するという1つのループを完結する。さらに,このようなループを回転させ続けることで,診断と治療の一体化を支えるための技術や知識を医療環境の中で持続的に発展させることか可能になる(表 1)。
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