笹本 浩先生

追悼　笹本　浩君

　笹本君が逝去された日の夕方，急に思いたって慶応から北里にこられた親友に，循環系の調べをお勧めした。全く虫の知らせとでもいう気持であった。君と最後にお会いしたのは，東京医科歯科大学の故佐野豊美教授の葬儀の席であった。「奥さまに心配をかけないように，慎重に」と呼びかけたら，「十六さんほど不養生はしていないよ」といわれて元気よく帰って行かれた。

　戦後間もなく東大講堂で日内総会があったとき，どこかの大学の方が心肥大Ecgについて演説された。忽然と討論席に立たれて，A．Weberの左室遅延説から，まだ固まってはいなかったが，Hemiblockの基本概念までを，手ぎわよく纒めて追加され，颯爽として引き上げて行かれた君が，慶応の笹本浩君であることを初めて知った。その後，医学書院で「呼吸と循環」の編集同人に入れていただき，毎月の会合でお目にかかることができた。