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司会(松原,神経内科) それでは主治医の磯崎先生,症例の呈示をお願いします。
症例呈示
主治医(磯崎,神経内科) 死亡時83歳の男性で,会社役員でした。既往歴は66歳,胃癌のため胃亜全摘,70歳,直腸早期癌のためpolypectomy施行,そして,76歳から高血圧のため降圧剤が投与されています。家族歴には特記すべきことはありません。
現病歴では,1993年(73歳),物が二重に見えるようになり,眼科を受診しましたが,原因は不明でした。2年後,頭部MRIで脳梗塞を指摘され,それによる複視と言われました。この頃から,歩行にやや困難を感ずるようになりました。1997年,体が傾くようになりましたが,特に左右への方向は決まっていませんでした。また,時々幻視がみられるようになり,動作も緩慢となってきました。
1998年1月,夜間頻尿となり,トイレまで間に合わず失禁することがあり,同年11月府中病院神経内科を初診しました。軽度のbradykinesiaがありましたが,rigidityは認められず,深部腱反射(DTR)は全体に正常~やや減弱し,左右差はありませんでした。排尿機能検査では高度の過活動型膀胱の所見でした。頭部CTでは深部白質に低吸収域と側脳室の拡大がみられ,頭部MRIでは,両側基底核にT2-high lesionの多発およびPVH(periventricular high intensity area)を認めたため,多発性脳梗塞およびそれによる無抑制膀胱と考え,propiverine2T/日およびticlopidine100mg/日を開始しました。しかし,2カ月ほど経過した時点で,「人がいる」などの幻覚症状がひどくなったため,propiverineを中止したところ,まもなく幻覚は減少しました。この頃から,時間が分からなくなったり,妻と娘を間違えるなどの症状が時々出現するようになりました。
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